mother’s lesson P35「お産の主役はあなた自身です。」
けれど…というお話。
広い海のどこかに、小さな魚のきょうだいたちが楽しくくらしていた。
みんな赤いのに、一ぴきだけはからす貝よりもまっくろ。およぐのはだれよりもはやかった。
なまえはスイミー。 ※1
皆さん、こんにちは。
瀬戸病院 病棟助産師です。
先の文章は皆さんご存じレオニレオニ作「スイミー」の一節です。
小学2年生の国語の教科書に載っています。
とおーっい昔を思い返してみれば、私も宿題として何度も音読したものです。
そして、この夏は娘の音読を何度も聞くことになります。
この物語の主役は言わずもがな「スイミー」。
おそろしいまぐろにきょうだいたちを飲み込まれてしまい、スイミーの冒険が始まります。
恐さ、寂しさ、悲しさを抱え、暗い海の底を泳ぐ中で、スイミーは海の中の素晴らしいものをたくさん見つけ元気を取り戻していくのです。
最後にはスイミーとそっくりな小さな魚のきょうだいたちと、大きな魚を追い出す「強い気持ち」をもちます。
「そうだ。みんないっしょにおよぐんだ。海でいちばん大きな魚のふりをして。」
スイミーは教えた。けっして、はなればなれにならないこと。
みんな、もちばをまもること。
みんなが、一ぴきの大きな魚みないにおよげるとうになったとき、スイミーは言った。
「ぼくが、目になろう。」
あさのつめたい水の中を、ひるのかがやく光の中を、みんなはおよぎ、大きな魚をおい出した。 ※2
初めてのお産に漠然とした不安が募る初産婦さん。
その痛みを知っているからこそ、不安な経産婦さん。
まさにスイミーはお産に立ち向かう産婦さんです。
赤い魚の1ぴき1ぴきは私たち助産師です。
医師であり、看護師であり、薬剤師です。
栄養士であり、調理師であり、検査技師でもあります。
瀬戸病院の全てのスタッフがスイミーの周りを囲む赤い魚です。
主役はスイミーです。けれど、私たちも一緒に大きな魚をおい出します。
そしてまたスイミーはお産を終えたお母さんでもあります。
不安や孤独を感じてしまうとき、ぜひ赤い魚を頼って下さい。
皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。
※1、※2引用 光村図書こくご二上「スイミー」